No.143 慶長金銀貨の原料:伊豆 卸売 河津町運上金山 大名坑 自然金・輝銀鉱(博物館級超高品位鉱624g)

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No.143 慶長金銀貨の原料:伊豆 河津町運上金山 大名坑 自然金・輝銀鉱(博物館級超高品位鉱624g)
伊豆 河津町南端部、下田市との境界線上に位置する運上山(標高260m)北東麓、大名坑坑口前で採集された高品位の金銀鉱です。白い縞状部分は石英、黒色部分は微粒の輝銀鉱(純銀表面の黒錆と同成分の硫化銀 Ag2S)や金粒が濃集して黒く見えるため銀黒と呼ばれます。 ダイヤモンドソー切断面の黒色銀黒中に大量の自然金と輝銀鉱が含まれ、星空の如く輝きます(1枚目写真)。黄・橙・赤・緑矢印先に、比較的大きな自然金粒が多数目視出来ます。輝銀鉱(成分Ag2S)粒は銀黒全体に密集し、強く輝きます。 大名坑坑口存在時の非切断自然面(3,4枚目写真)にも銀黒が不規則にに浮き出ていますが、個々の輝銀鉱粒は目視困難です。 江戸時代初期、慶長年間(1596-1615年)の運上山から北方の天領山に至る一帯は天領(江戸幕府直轄地)となり、伊豆金山奉行大久保岩見守長安指揮下、金山開発が一斉に行われ、伊豆は佐渡と並ぶ江戸時代の二大産金地帯となりました。採掘された金銀鉱は河津町内で灰吹き精錬され、慶長大判など金銀貨原料の供給源となりました。 近代には河津町内で運上、縄地、大松、谷津等の緒金山(10枚目位置図)が稼行されましたが、いずれも慶長時代金山跡の再開発です。 河津町内の慶長時代金銀精錬所跡にはカラミ(金銀鉱精錬滓)が現存し、金山奉行長安屋敷跡(10枚目位置図)も存在します。
運上金山の概要:運上金山は運上山頂直下に胚胎する高品位金銀石英脈を採掘した歴史的金山です。 天正3年(1575年)北条氏により運上山頂の鉱脈露頭の採掘が開始され、慶長3年(1598年)徳川幕府の伊豆金山奉行 大久保石見守長安により、運上山北東麓より頂上直下に向けて大名坑と呼ばれる延長500mの大通洞坑(8枚目写真)が開鑿され、高品位金銀鉱の坑内採掘が行われました。 大名坑は長安が馬に騎乗のまま坑内巡視が出来るよう綺麗な矩形に掘削された国内最大級の手掘り大坑道(9枚目写真)で、歴史的価値の高い金山遺構ですが、現在は藪に埋もれ、忘れ去られつつあります。近代に至っては、大正3-4年に埋もれていた大名坑を取り開け、坑内に廃棄されていた慶長時代の低品位鉱3000t(平均品位6g/tAu)が回収され日立精錬所に売鉱された、との記録があります。

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